【解説】健康診断の検査内容で何がわかるの?
健康診断や人間ドックのそれぞれの検査内容から、ご自身の身体の何がわかるのかを理解されていない方が多いと思います。
ここでは、大阪市東淀川区にある当クリニックで健康診断を受診された際にわかる検査内容について解説していきます。
健康診断には法定健診1と法定健診2があり、それぞれの検査内容には以下の項目があります。
【法定健診1】
身体計測(身長・体重・腹囲)
視力・聴力・血圧
胸部X線
尿検査
【法定健診2】
身体計測(身長・体重・腹囲)
視力・聴力・血圧
胸部X線
心電図
尿検査
血液検査
大阪市東淀川区にあるゆうメディカルクリニックの人間ドックは健康診断の検査内容を基本項目としており、
胃、大腸、脳、肺のそれぞれに特化した検査を組み合わせております。
では、各項目で何がわかるのか解説していきたいと思います。
標準体重
(身長m)×(身長m)×22で算出されます。(「22」はBMIの標準値です。)
BMI
Body Mass Indexの頭文字から取り「BMI」、ボディマス指数と呼ばれています。この指数は、体重と身長から肥満度を判定する指標の1つになります。
算出の計算式は世界共通で (体重 kg ) ÷ (身長 m )2 となりますが、肥満度の判定基準は国により違ってきます。日本肥満学会ではBMI「22」を標準として判定しており、この数値が肥満との関連が高い生活習慣病にもっとも病気にかかりにくい数値とされています。この数値が「25」を超えると生活習慣病にかかるリスクが2倍以上になるため、注意が必要です。
《日本肥満学会の定めた基準》
18.5未満: 低体重(やせ) / 18.5〜24.9: 普通体重 / 25.0〜29.9: 肥満1度 / 30.0〜34.9: 肥満2度 / 35.0〜39.9: 肥満3度 / 40.0以上: 肥満4度
肥満度
肥満度を算出するための計算式は (体重kg-標準体重kg)÷(標準体重kg)×100になります。
肥満度を調べるために必要な標準体重を算出する計算式は (身長 m )2 ×22です。
《指標》
±10%: 正常 / 20%以上: 太り過ぎ / −20%以下: やせ過ぎ”
腹囲
BMIには内臓脂肪が表れにくいという欠点があるため、メタボリックシンドロームの判定基準には、腹囲の結果が第一ステップになります。腹囲はウエストのくびれている箇所ではなく、へその位置で測ります。
以上の基本的な身体計測は、健康診断において患者様の健康状態を把握する重要なツールとなります。血圧や体温、体重などの基本計測から、1日2回の摂取カロリー量、不要な体脂肪などの詳細な情報も把握できるようになります。また、今まで把握した情報を用いて改善への必要な部分を洗い出し、目標を設定し健康状態の改善を図ることが可能となります。
視力
遠距離は5m、近距離は眼とモニター画面の距離とほぼ同じ50cm、または一般のデスクワーク時の視距離として33cmにおける視力を検査しています。
視力を測定することは、疾患の早期発見や予防、他の疾患の効果判定などに役立つ可能性があります。視力の低下は、高血圧、糖尿病などの疾患と関連している可能性があり、また、高血圧、糖尿病とともにみられる非糖尿病性網膜症などの兆候が早期に検出できる可能性もあります。さらに、視力を測定することで疲労などの眼病の特定も行えます。
聴力
1000Hz(人の話し声)、4000Hz(電話のベル)程度の音が日常生活に支障ない程度に聞こえているかどうかを調べます。聞こえていれば「所見なし」、聞こえなければ「所見あり」との結果になります。
耳は左右両方の耳で聞いているので、どちらか片方の耳が聞こえていれば、もう片方の聴力が低下してしまっていても気がつきにくい状況となります。そして聴力の低下に気がついた時にはかなり進行しているため、治りにくくなってしまいます。耳が聞こえにくい、聞こえていないなどの場合に疑われる病気には「中耳炎」「難聴」「メニエール病」「上咽頭がん」「筋ジストロフィー」など様々な病気があります。聴力検査は、できるだけ早く聴力の低下に気づき、病気を早期発見、予防するために行います。
血圧
血圧とは、心臓が血液を動脈に送り出すときに適切な圧力を提供しているかどうか把握するものです。血圧を計測することは、健康診断においてとても重要です。自覚症状がないからと、血圧に関する異常をほったらかしにしていると、命に係わる大変な病気を引き起こす可能性があり、高血圧は動脈硬化を促進させるので注意が必要です。ただ、血圧は1日の中でも変動するので、1~2回の測定だけで高血圧だと決めるのは不適当で、時間や日をおいて何度か繰り返し測定してから判断する必要があります。血圧の値により、冠状動脈性心疾患の発症のリスクを予防できます。
胸部X線
胸部X線検査は、胸部の病気や障害を検出するための医療検査です。X線は人々の内部構造を観察し、胸部の病気、肺炎、動脈硬化性疾患などを発見することができます。胸部内の空気の存在や位置を診断することも可能となり、呼吸器疾患を早期に検出して対処を行うこともできます。また、うっ血性心不全や心筋梗塞など、心疾患を早期発見するための根拠となるのと同時に、心臓病の病態を判定する際にも用いられます。側わん症(背骨の歪み)、肋骨や背骨の骨折の跡などを診ることもできます。
心電図
心電図(ECG、またはEKG)とは、心臓の収縮、拡張の時に起きる微小な電流の変化をからだの表面に装着した電極から検出し、波形として記録したものです。これは、心臓の拍動によって発生する電位変化を記録し、心臓の働きを測定するための医療検査です。心筋症、心筋梗塞、心室細動などの病気を発見し、心臓の病理学的障害を診断したり、心血管系の状態を評価するために重要な役割を果たしています。健康診断における心電図を計測する意義は、心臓の動きが正常であるかどうかを理解し、早期に心臓病を発見し、安全な健康管理を行うことです。
尿検査
尿糖
尿中に糖が混ざっていないかを調べています。糖尿病などで血糖値が高くなると尿に大量の糖が混ざるようになるので、尿糖の検査は糖尿病発見の手がかりとなります。
尿蛋白
尿中に蛋白が含まれているかを調べています。陽性(+)の場合、腎臓の障害が疑われますが、発熱や疲労などで一時的に陽性になることもあります。
尿潜血
尿中に血液が含まれているかを調べています。尿中に血液が含まれていると、腎臓、尿管、膀胱、尿道などに何らかの異常がある可能性があります。
尿沈渣
尿を遠心分離して、成分を顕微鏡で調べる検査です。腎疾患や膀胱疾患について診断します。
Ph
健常人の尿は弱酸性ですが、一般に動物性食品過剰摂取後では酸性に、植物性食品過剰摂取後ではアルカリ性に傾くとされています。
尿比重
尿中の成分や体内の水分量に影響を受けます。水分の取り方や発汗によっても値が変わります。尿崩症、腎機能不全などで低くなり、糖尿病、ネフローゼ症候群などで高くなります。
ウロビリノーゲン
ビリルビン(胆汁色素)が分解されてできるものです。健康な人でも一部尿中に出ますが、肝臓や胆嚢に異常があると、尿中に多く出てきます。
尿検査は定性検査と定量検査があり、尿中の蛋白や糖などを調べ、様々な病気やその兆候を知ることができる検査です。尿には、体内で不要となった老廃物をはじめ、さまざまな物質が水と一緒に排泄されますが、体に異常があるといつもと違う成分が排泄されるため、それらを検査することにより体内の情報を得ることができ、病気の早期発見ができます。そのため、健康診断では必ず行うべき検査といえます。
血液検査
血液成分を1つずつ検査します。血液検査で測定する可能性があるものは以下のとおりです。
総コレステロール
コレステロールは細胞やホルモンを作る大事な役目を果たしている脂質の一種ですが、数値が高くなり過ぎると動脈硬化を引き起こします。
中性脂肪
本来なら身体のエネルギー源となりますが、血中で多くなり過ぎると、動脈硬化を進める可能性があります。太り過ぎや食べ過ぎ、アルコールの取り過ぎ、運動不足によって高い数値が出ることがあります。
HDL-コレステロール
善玉コレステロールと呼ばれ、悪玉コレステロールを運び出す働きがあり、動脈硬化を防ぎます。有酸素運動により増加し、逆に喫煙、肥満により減少します。
LDL-コレステロール
悪玉コレステロールです。多くなり過ぎると、動脈硬化を促進させます。
AST(GOT)、ALT(GPT)
体の蛋白質を構成するアミノ酸を作るために必要な酵素で体のあらゆるところにあり、特に肝臓に多く含まれます。肝臓が傷つくと血液中に漏れ出てきます。そのため、AST、ALTともに高い時は肝臓の障害が疑われます。
γ-GTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)
肝臓や胆道系に障害があると数値が高くなります。特にアルコールの飲み過ぎや肥満により高値を示します。
ALP(アルカリフォスターゼ)
肝臓や胆道系に障害があると数値が高くなります。また、骨や甲状腺の障害でも高値となる特徴があります。
LDH(血清乳酸脱水素酵素)
身体のなかに病気や炎症が起きると増える酵素です。基準値よりも高い場合は、肝臓や心臓、血液の病気が疑われます。
総ビリルビン
胆汁に含まれる色素です。高値だと胆石症、肝機能障害などが疑われます。
総蛋白
肝臓の作業能力、栄養状態のチェックができます。また、腎臓病の時に減少することがあります。
アルブミン
蛋白の一種で、この値が低くなると肝硬変、腎臓病の可能性があります。
HBs抗原
陽性(+)の場合、現在B型肝炎ウイルスを保有していると考えられます。さらに詳しい検査を行う必要があります。
HCV抗体
陽性(+)の場合、過去にC型肝炎にかかったことがあるか、または現在感染状態にあるということを表します。C型肝炎ウイルスが体内に現在存在しているかを調べる必要があります。
A/G比
血中の蛋白であるアルブミンとグロブリンの比率を表しています。肝臓障害、ネフローゼ症候群などで低下します。
コリンエステラーゼ
肝臓で合成される酵素です。肝機能に異常があると値が増減し、低値の場合は肝炎、肝硬変など、高値の場合はネフローゼ症候群、脂肪肝などが疑われます。
アミラーゼ
主に膵臓と唾液腺から分泌される酵素です。膵臓や唾液腺に異常があると値が上昇したり、極端に低くなったりします。
クレアチニン・尿素窒素(BUN)・eGFR
クレアチニン、BUNは体内で使用された蛋白質の老廃物の一種で、腎臓の機能が低下すると尿中への排泄が減少し、血液中に増加します。血中のクレアチニンと性別、年齢から計算して「腎臓のろ過機能」を推定する値が、「eGFR」です。eGFRが60未満で3ヶ月以上持続する場合に慢性腎臓病とされ、将来透析になるリスクが高くなります。
空腹時血糖
糖尿病の有無を調べています。血糖とは血液中のブドウ糖のことで、細胞のエネルギー源となる大切な物質です。一定以上の高い血糖値が長期に渡って持続すると、血管に障害を及ぼし動脈硬化を助長し、腎臓や網膜、末梢神経に障害を与えたり、心筋梗塞や脳梗塞の危険因子となります。10時間以上絶食(水以外)してから測定した血糖値を空腹時血糖値といい、食事の時間と関係なく測定した血糖値を随時血糖値といいます。
HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)
約1ヶ月前からの血糖値のコントロール状況を調べることができます。
尿酸
ほとんどは尿中に排泄されますが、血液中の濃度が一定以上になった場合、痛風となることがあります。また、腎機能を低下させたり、腎結石の原因にもなります。
ヘマトクリット・ヘモグロビン・赤血球数
貧血を見つける検査です。赤血球には細胞に酸素を運び、炭酸ガスを持ち去る「ガス交換」をする役割があり、赤血球中に含まれるヘモグロビンが主に働きます。ヘマトクリットは一定の血液量に対する赤血球の割合を表したものです。出血、赤血球を造るのに必要なホルモンの不足、あるいは骨髄の働きが悪くなると赤血球数は減少します。また、原料である鉄が不足するとヘモグロビンが減少し、貧血となります。
白血球数
白血球は体内のどこかに細菌による感染があると増加し、これを殺す働きをしています。また、白血球そのものの病気でも増加したり、極端に減少したりします。
血小板数
血小板は出血した際に止血に関わる血球成分です。数が減少すると出血がとまりにくくなったり、青アザができやすくなったりします。
MCV
赤血球1個の平均的容積量です。赤血球の大きさの指標となるものです。
MCH
赤血球1個に含まれるヘモグロビン量を平均的に表したものです。
MCHC
平均赤血球ヘモグロビン濃度を指し、赤血球1個あたりの容積に対するヘモグロビン(血色素)の量の比率を%で表したものです。
血液像
白血球は主に5種類に分類することができます。割合、異常な細胞の有無を調べることにより、炎症や病原菌の感染、白血球の病気を詳しく調べることができます。
Na・K・Ca・Cl・P(電解質)
電解質は食べ物として体内にとり入れられ、人間が生きていくうえで重要な役割を果たしています。主に腎臓とホルモンの働きによって濃度が一定に保たれているので、そのバランスがくずれている場合は、腎臓やホルモンなどに異常が生じたことがわかります。
TPHA・RPR
梅毒にかかったことがあるかどうかを調べています。梅毒の原因は梅毒トレポネーマという病原菌で、病名は症状にみられる赤い発疹がヤマモモに似ていることに由来します。感染すると全身に様々な症状が出ます。早期の薬物治療で完治が可能です。検査や治療が遅れたり、治療せずに放置したりすると、長期間の経過で脳や心臓に重大な合併症を起こすことがあります。
CRP
CRPとは炎症や細胞・組織破壊が起こると血中に増加するタンパク質です。体内の炎症や組織破壊のある病気が発生すると血液中で増加します。
CK(クレアチンキナーゼ)
クレアチンキナーゼとは筋肉の収縮の際のエネルギー代謝に関与しており、骨格筋や心筋が障害を受けた際に血液中へ流出します。心筋梗塞、筋炎、筋ジストロフィーなど心筋障害・筋疾患で血中のCK濃度が上昇しますが、激しい運動などでも筋線維が壊れるため血中のCKの上昇がみられることがあります。
血液検査ではさまざまな血液病や内科疾患の検査を行うことができます。
血液検査は、身体の健康状態を把握するのに有効なツールで、病気になる前に血液内のバランスをチェックし、早期発見や予防を可能にします。また、血液検査の結果からどのような治療が必要かや、血液疾患などの潜在的なリスクを予測することができます。
おわりに
人間ドックと健康診断では、目的や検査項目などさまざまな違いがあります。健康診断は病気の予防が目的のため、検査の項目が少なめです。一方、人間ドックは基本項目だけでも約50種類あるだけでなく、オプションも追加できます。そのため今の健康状態をより詳しく具体的に検査することができます。検査の結果から将来の病気のリスクを知り対策することで、健康な状態を保持することができます。
健康診断でもご自身の身体を知るための一歩となりますが、ご自身の健康状態を知り、日々の生活習慣を振り返り、健康で元気な生活を送るためにも、年1回人間ドックの受診をおすすめします。
吹田市や摂津市、守口市など遠方からも多くの方にご利用いただいている大阪市東淀川区にある当クリニック「ゆうメディカルクリニック」では、短時間で費用もお安い各種クイックドックをご用意しております。クイック脳ドック、肺ドック・胃ドックなど、気になる検査を組合せて同日にまとめて検査することもできるので、お急ぎの方や費用面を抑えたい方におすすめです。ご興味のある方は、ゆうメディカルクリニックへお気軽にご相談ください。
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